Substackのリスタックは、いいねの延長ではない。フォロー外の読者への配信を動かす装置である
なぜコメントを添えたリスタックが自分に返ってくるのか。Substack公式の実数とアルゴリズム設計者Mike Cohenの一次情報で検証する
2025年10月27日、Substackが公式ブログで「Demystifying the feed」という記事を公開した。そこに記された実数がある。記事が公開されるまでの3ヶ月間だけで、読者がSubstackアプリの中で新しく購読を始めた件数は、有料でおよそ50万件、無料では3,200万件超。そして、その大半はNotesのフィード、Xで言うタイムラインに当たる画面が入口だった。
この数字が突きつけている現実は明快だ。Substackの新規購読の主戦場は、記事の中ではなくフィードの中にある。そしてフィードには、Xのリポストと見た目がそっくりなボタンがある。
リスタックだ。
SNSの感覚でSubstackを使っている人ほど、これをいいねの延長にある軽いシェアボタンだと思って押している。私はここに違和感がある。Substackの内部構造の中で、リスタックはリポストとはまったく違う重さを持つ装置だからだ。
今回は、なぜリスタックが効くのか、なぜコメントを付けたリスタックがさらに自分に返ってくるのか、英語圏の一次情報と実践者データを積み上げて解説する。あわせて、出回っている数字のどこまでが検証済みの事実で、どこからが売り手の自己申告なのかも切り分ける。この切り分けをしない紹介記事が多すぎるからだ。
フィードはフォロー外にも届く。その配信を動かす判断材料がリスタックである
まず構造から押さえる。Notesのフィードは、フォローしている相手の投稿だけで構成されているわけではない。むしろ、フォローしていない書き手の投稿が次々と流れてくる。数日使えば誰でも気づくこの特徴は偶然ではなく、公式が明言している設計思想だ。フィードは、書き手を既存の読者の外側へ届けるために作られている。つまりあなたのNoteは、最初からまだ見ぬ読者に届く資格を持っている。
ならば、投稿すれば勝手に広がるのか。広がらない。フォロー外の誰のフィードに何を載せるかを決めているのはアルゴリズムであり、アルゴリズムは判断材料を必要とする。その材料が、いいね!、返信、そしてリスタックというエンゲージメントだ。「Notesを毎日書いているのに増えない」という嘆きの正体はここにある。投稿はしている。しかし、配信の判断材料になるシグナルが集まっていない。
そしてリスタックには、他のエンゲージメントにない性質がひとつある。アルゴリズムの選別とは別に、直接の配達経路を持つことだ。フォロワー1,000人のAさんがあなたのNoteをリスタックすれば、あなたの投稿はAさんのフォロワー1,000人に向けて配信される。あなたのフォロワーが50人でも、である。逆もまた真で、あなたが誰かをリスタックすれば、その投稿はあなたのフォロワーに届き、相手には「誰にリスタックされたのか」という通知が飛ぶ。相手はあなたのプロフィールを見に来る。ここから相互フォローが生まれ、購読が生まれる。
Xのリポストと似ているが、決定的に違う点がひとつある。Xのアルゴリズムは滞在時間と広告収益のために動くが、Substackのフィードは購読を生むために設計されている。この違いが、次の核心につながる。
Substack公式が明言した。リスタックと返信は「最も効果的な成長手段のひとつ」である
ここからが一次情報だ。前述の公式記事「Demystifying the feed」の中で、Substackは成長分析の結論としてこう述べている。他のパブリッシャーをシグナルブーストすること、そして広い会話に参加すること。この2つが目に見える成長と結びついていた、と。さらに、心から敬意を持てる相手をリスタックし、返信することは、単なる良きコミュニティ行動ではなく、最も効果的な成長手段のひとつだと言い切っている。
プラットフォーム運営者自身が、自社データを見た上で「他人を推すことが成長に直結する」と公文書で断言する。私もこの業界に20年いるが…これはSNSの歴史の中でもかなり珍しい言明だ。XやInstagramが、他人の投稿をシェアせよ、それがあなたの成長に直結すると公式に推奨する姿を、私は見たことがない。
なぜSubstackではそうなるのか。答えを持っているのが、Notesアルゴリズムの設計責任者であるMike Cohen、Substackの機械学習責任者だ。彼は2025年秋の公開説明の中で、アルゴリズムの目的関数を明かした。要約すればこうだ。広告モデルのSNSは滞在時間を最大化する。SubstackはSubscription、つまり購読で収益が立つ会社なので、フィードは読者とライターを購読で結びつけることを最大化するよう設計されている。
そして肝心のリスタックについて、Cohenはこう説明する。リスタックや引用はすべてSubstackプラットフォーム内で完結する行動なので、運営は行動の全ライフサイクルを把握できる。そこからオーディエンスの重複を検出し、重複が見つかれば互いの読者に互いのコンテンツを流す。この重複の検出と相互流通が「好循環」になる、と。
つまり、あなたが誰かをリスタックするたびに、あなたはアルゴリズムに教師データを渡している。「私の読者は、この人の書くものにも反応するはずだ。似た読者を探して私に連れてこい」という指示を、無料で、ボタンひとつで出しているのだ。重要なのは、事前に読者層の一致を証明する必要などないという点である。重なりは事前条件ではなく、あなたのリスタックという行動からアルゴリズムが学習していく結果だ。接点は、あなたが作る。ここまでが検証済みの事実である。
なぜ「コメント付き」がより自分に返ってくるのか。経路は3つある
本題に入る。無言のリスタックと、自分の言葉を添えたリスタック。後者の方が自分に返ってくる。この主張の根拠を、3つの経路に分解する。
第一に、アルゴリズムへのシグナルの深さが違う。公式が成長要因として挙げたのは「シグナルブースト」と「会話への参加」のセットだったことを思い出してほしい。無言のリスタックが満たすのは前者だけだ。コメント付きのリスタックは、シェアであると同時に会話の起点でもあるため、2つの成長要因を1回の行動で同時に満たす。実践者の観察も一致していて、購読者15,000人超のニュースレターEscape the Cubicleの筆者は、リスタック時にコメントを残すことで、ボタンを押して去ったのではなく意味のある関与をしたという信号がアルゴリズムに伝わると分析している。
第二に、相手との関係が起動する。リスタックの通知を受け取った相手は、コメントがあれば返信できる。返信が付けば会話になり、その会話のスレッド自体が双方のフォロワーのフィードに露出する。露出が伸びるだけではない。Substackにはニュースレター同士が読者を送り合うRecommendations機能があり、誰を推薦するかは書き手が自分の手で選ぶ。無言でボタンを押しただけの相手と、会話を交わした相手、どちらが選ばれやすいかは言うまでもない。無言のボタンからは関係は生まれない。一言のコメントからは生まれる。
第三に、自分のフォロワーへの文脈提供だ。無言のリスタックは、フォロワーのフィードにあなた経由で他人の声だけが流れる状態を作る。コメント付きのリスタックは、他人の素材の上にあなたの視点が一段乗る。つまりシェアそのものがあなたのコンテンツになる。私はここが一番大きいと考えている。何を推すか、そこに何を付け加えるかで、あなたが何の専門家なのかが読者に伝わっていくからだ。書評家の書棚と同じで、選書とひとことの評が、その人の知性の輪郭を描く。
実際に数字を出した実践者は、何をしたか
英語圏には、リスタックを運用の中心に置いて伸びた実践者が複数いる。代表例を2人挙げる。
前述のEscape the Cubicleは、2026年1月に30日間の戦略的リスタック運用を実施し、全投稿のビューが20から30パーセント増加、Notes経由だけで30日間に900人超の購読者を獲得したと報告している。運用の中身は1日10分。朝に前日の自分の記事をリスタック、日中に先週好調だった自分のNoteをリスタック、午後に他の書き手のコンテンツを1、2本リスタックする。自分の記事のリスタックが効く理由も明快で、メールで読む読者とアプリのフィードで読む読者は別の生き物であり、リスタックは後者への二度目の配達になるからだと説明している。
もうひとつ。クリエイターのMatt Giaroは、2024年7月からNotes中心の運用で1日18人以上、月500人以上のペースで購読者を増やしたと公表している。彼の指摘で重要なのは、反応してくれた読者と購読ボタンの距離だ。Xであなたの投稿に反応した人をニュースレターの購読者にするには、プロフィールを開かせ、外部リンクを踏ませ、別のサイトでメールアドレスを入力させる必要がある。この長い道のりの途中で、人はどんどん脱落していく。Substackは違う。あなたのNoteにいいねやコメントやリスタックをした人は、その時点ですでに購読ボタンと同じアプリの中にいる。気になった書き手のプロフィールを開けば、その場のワンタップで購読が完了する。反応から購読までの間に、乗り換えが一度もないのだ。
そして、この実践者たちの数字は、ここまでで見てきた一次情報と同じ方向を指している。フィードは購読を生むために設計されている。リスタックはオーディエンス重複の検出材料として使われている。シグナルブーストと会話参加の両方が成長と結びついていると、Substack自身が明言している。公式が説明する仕組みと、現場で伸びた人間の数字。別々の場所から出てきた2つの情報が一致しているとき、それは偶然ではなく構造だ。だから私は、コメント付きリスタックを推す。成長と結びつく2つの行動、シグナルブーストと会話参加を、コメント付きリスタックは1回で同時に満たすからである。
明日からの運用。1日10分、ただしコメントは絞って書け
運用に落とす。使うのは1日10分でいい。手順は3つだ。1、自分の前日の記事またはNoteを1本リスタックする。メール読者とフィード読者の両方に届けるためだ。2、フィードを流し読みして、心が動いた投稿をひとつ選ぶ。同業である必要はない。認識が一段変わった、悔しいが唸った、自分の仕事に持ち帰れる。基準はそれだけでいい。3、動いた理由を一言添えてリスタックする。
ここで、英語圏の一部で言われている「リスタックは自分のニッチ内に限定せよ」という教えに触れておく。私はこの縛りに従う必要はないと考えている。理由は2つある。第一に、Cohenの説明を思い出してほしい。オーディエンスの重なりは事前条件ではなく、リスタックという行動からアルゴリズムが学習する結果である。ジャンルの違う書き手をリスタックすれば、アルゴリズムはそこに新しい接点を発見する。第二に、読者は単一のテーマだけを読む生き物ではない。AIの記事を読む人間が、経営の記事にも、マーケティングの記事にも反応する。ジャンルを越えたリスタックはあなたのプロフィールに人間の輪郭を与え、あなたのフィードを単調な業務連絡から救う。心が動いたなら、ジャンルを理由にためらうな。それが結論だ。
コメントの質について、ひとつだけ釘を刺しておく。「素晴らしい記事です」は書くだけ無駄だ。それは会話の起点にならないし、あなたの専門性も伝えない。書くべきは、自分の経験を一段乗せた一言である。相手の主張に対して、自分の現場では何が起きたか。どの一文で認識が変わったか。あえてどこに異論があるか。この一段があって初めて、リスタックはあなたのコンテンツになり、相手の返信を呼び、アルゴリズムと人間の両方に届く。
リスタックは施しではない。アルゴリズムに対しては「私の読者はこういう人間だ」と教える教師データの提供であり、書き手に対しては関係の起点であり、自分の読者に対しては選球眼の証明である。無言のリスタックは、署名のない推薦状だ。コメント付きのリスタックは、あなたの名前で出す推薦状である。誰を、どんな言葉で推すか。その選択の蓄積が、フィードの中でのあなたの顔になる。





SNSによって機能の意味合いが異なる、という基本を知ることができました。ありがとうございます
たしかに、リスタックからのフォローや購読が多い気がします。
今までは自分のポストをリスタックしていなかったので、今後はそれもしていこうと思います!