サブスタックにおいてNotesを読ませるコツ
Notesは毎日書いている。いいねも付く。なのに購読者は増えない。その状態を、アメリカのSubstack実践者たちは感覚ではなく実数で解いていた。
なぜ「いいね」は増えても購読者が増えないのか
Substackで発信している人なら、一度はこの壁にぶつかる。Notesを投稿する。いいねが30付く。リスタックも数件回る。それなのに、購読者リストの数字は1ミリも動かない。
この感覚は気のせいではない。アメリカの分析が、それをはっきり数字で裏付けている。Substackの分析ツールWriteStackのデータをもとに、Sinem GünelとOrelが2026年4月に投稿された9,641件のNotesを集計したところ、購読者を1人でも獲得できたNotesは956件しかなかった。残りの8,685件は、いいねとクリックは集めても、購読には1人もつながっていない。Notesのおよそ9割は、反応こそ得ても購読には結びついていなかったということだ。
つまり問題は投稿量ではない。Notesという機能の使い方そのものに、勝ち筋と負け筋がある。日本ではまだ語られていないが、英語圏ではこの勝ち筋がかなり具体的な形で共有されている。今日はそれを紹介する。
Notesは「橋」であって「目的地」ではない
まず前提を一つ。英語圏の実践者がそろって言うのは、Notesは作品そのものではなく、作品へ人を運ぶ橋だということだ。Matt Giaroはこれを「高速道路沿いの看板」と表現している。看板そのものを読ませるのが目的ではない。看板を見た人を、本体である長文記事と購読フォームまで連れていくのが目的だ。
この設計はSubstack側の思想とも一致している。共同創業者と、Notesアルゴリズムを設計した本人が語ったところによれば、Notesは他のSNSのように滞在時間を延ばして広告を見せるためのものではない。読者を、その人が購読し、いずれ課金したくなる書き手に出会わせるために最適化されている。だらだらスクロールさせるための投稿はアルゴリズムに評価されない。読者を書き手につなぐ投稿が評価される。ここを取り違えると、いくら頑張っても空回りする。
コツ1 最初の一文で「何者か」を名乗る
9,641件の分析で、他のどの要素より強烈に効いたのがこれだった。冒頭の一文に、肩書き・経歴・年数・年齢といった、具体的で検証可能な事実を置く。たとえば「医学部で6年学んだ私が言う」「55歳になって、母の言葉の意味がやっとわかった」のように、抽象的な前置きではなく、確かめられる一点を先に出す。
この型を使った45件のNotesは、平均3.13人の購読者を獲得した。使わなかった9,596件の平均は0.15人。差は20.7倍だった。一人の書き手が数字を引っ張っている可能性を除外して計算し直しても、約2.1倍の上乗せが残った。
理由は単純だ。Notesのフィードを流れていく相手は、あなたを知らない他人ばかりだ。プロフィールも経歴も見ない。読むかどうかを判断する材料は、最初の一文しかない。「もっと寝たほうがいい」は通りすがりの誰かの言葉だが、「医学部で6年学んだ私が言う。睡眠について多くの人が誤解している」は医者の助言になる。同じ内容でも、信頼が先に立つかどうかで結果がまるで変わる。
大事なのは具体性だ。年数、役職、年齢、機関名。これがあると効く。「ずっと考えてきたことだが」のような曖昧な前置きは肩書きにならない。私が見るに、日本の一人社長や士業の人ほど、この一文を遠慮して削ってしまう。謙遜は美徳だが、見知らぬ相手のフィードでは不利に働く。名乗れる事実があるなら、最初に置く。
コツ2 同じ言葉で三行畳みかける
次に効いていたのが、行頭で同じ言葉を繰り返す書き方だ。修辞でいうアナフォラにあたる。「誰も教えてくれなかった、Xを。誰も警告しなかった、Yを。誰も触れなかった、Zを」のように、連続する三行を同じ言葉で始める。
この型を使った408件のNotesは平均0.48人を獲得し、使わない場合の0.15人に対して3.16倍。1人以上の購読者を得た「当たり」の発生率も、9.7%から13.7%へ上がった。
これが効く理由は、視覚と読書リズムの両方にある。Substackのフィードは、左寄せの文章が延々と続く壁だ。どのNotesも視界の端では同じ形に見える。そこに同じ言葉で始まる三行があると、縦の背骨ができて視線が下に引きずられる。読み始めた後は、繰り返しがリズムを作り、読者の脳が四行目を先回りして期待する。三行で止めても、もう読み切る態勢に入っている。スクロールを止め、最後まで読ませるための仕掛けだ。
コツ3 Notesは短く切る
長さにも明確な最適点があった。英語のNotesでは、本文31語から60語の帯が最も購読につながっていた。これより短すぎても、長すぎても落ちる。
31〜60語のNotesは平均0.22人。1〜30語は0.15人、61〜120語は0.13人まで下がった。理由はフィードの「もっと見る」の境界にある。61語を超えるとフィード上で折りたたまれ、読者がタップして展開しなければ全文が読めない。そして大半の読者はタップしない。
ただし、ここは私の考えをはっきり書いておく。31語から60語というのは英語での語数で、日本語にそのまま当てはまらない。原理として残るのは、フィードで「もっと見る」を押させずに全文を読み切らせる、という一点だけだ。これはNotesというフィードの折りたたみが生む構造上の制約であって、文章が短いほど優れているという話ではない。
私はこの違いにこだわる。世の中には、文章はとにかく削れ、短いほど読まれて拡散する、という風潮がある。私はあらゆる場所で、そう言われ続けてきた。だが私は、20年以上、文章を書くことを仕事にしてきて、短くしてよかったと感じたことが一度もない。短いほうが成果が出たという経験が、人生で一度もないのだ。
文章には適正な長さがある。その長さは、削る前提からではなく、伝えるべき中身と、読む相手と、載せる媒体から決まる。削ることそのものを正義とするこの世の風潮に、私は逆らう。英語圏ではこういうデータが出ている。それは事実として紹介する。だが私自身がこれに倣うつもりは、まったくない。
コツ4 「いいね」ではなく「リスタック」を狙う
もう一つ、優先順位を間違えやすい点がある。多くの人がいいねの数を気にするが、購読を運んでくるのはいいねではなくリスタックだ。
9,641件の集計では、いいね1件あたりの購読者は0.0035人、リスタック1件あたりは0.0429人。リスタックはいいねの約12倍の威力がある。さらにリスタックは伸び方が指数関数的で、100件を超えたNotesは平均3.67人を獲得し、1人以上の購読者を得る確率が75%に達した。
仕組みを考えれば当然だ。いいねは、ほとんど誰の目にも触れない私的なうなずきにすぎない。リスタックは、あなたのNotesを他人のフィードに、その人の推薦付きで載せる。1件のリスタックが1回の無料の配信機会になる。そして人は、文章がきれいだからリスタックするのではない。それを共有することで自分が賢く、面白く見えるからリスタックする。コツ1の肩書きとコツ2の畳みかけが効くのも、結局どちらも「シェアしたくなる理由」を作っているからだ。いいねを集めにいくのは、ゴールを取り違えている。
コツ5 疑問符を句点に変える
これは意外な発見だった。本文のどこかに疑問符が入っているだけで、購読への転換率が落ちる。
疑問符を含む2,100件のNotesは平均0.116人、含まない7,541件は0.179人。疑問符が入るだけで平均35%の下落。具体的な場面から入るNotesでは、疑問符を一つ足すと0.34人から0.14人へ、59%も崩れた。
理由は、質問が読者に作業を押し付けるからだ。「Xって、いつもYだと思いませんか」と聞かれると、読者は自分に当てはまるか、答えはあるか、読み続けるか、と何度も判断を迫られる。その一つ一つがスクロールの口実になる。断定はその逆で、完成した思考をそのまま手渡す。読者はただ受け取り、賛成か反対かを決めて先へ進む。速いフィードでは、考えさせない側が勝つ。「なぜ多くの書き手は失敗するのか?」は「多くの書き手は、たった一つの理由で失敗する」に書き換える。意味は何も失わず、転換率だけが上がる。
ただし、ここは少し丁寧に見ておきたい。英語圏でNotesの書き方を教える人たちは、むしろ「問いかけから始めよ」と勧めることが多い。質問は読者の好奇心を刺激し、つい反応したくなる、という理屈だ。これは、先ほど示した数字と一見矛盾する。だが、よく見ると食い違ってはいない。二つは別のことを測っているだけだ。質問が得意なのは、スクロールする指を止めさせること。つまり注意を引くところまでだ。その読者が購読ボタンを押すかどうかを決めるのは、断定の力だ。質問は読者に「考える」という仕事を渡す。断定は答えそのものを手渡す。注意を集める場面と、行動を促す場面では、効く道具が違う。
だから私はこう使い分ける。フィードで一瞬足を止めてもらうために問いを置くのはいい。だが、購読へ運ぶ最後の一押しは、必ず断定で書く。
コツ6 自分から出すより、他人のNotesに乗る
立ち上げ期に最も効くのは、実は自分のNotesを量産することではない。他人のNotesへの返信だ。Pubstack Successが繰り返し説いているのは、他人のNotesに返信すると、その投稿主のネットワーク全体にあなたの返信が表示されるという点だ。相手の購読者、そのまた購読者にまで届く。自分の小さなフィードに向かって投稿するより、はるかに多くの新しい目に触れる。
本当に良いと思った書き手の投稿を引用リスタックし、相手に言及するのも同じ効果を持つ。ここで大事なのは、心から良いと思ったものだけにすること。狙って群がると、すぐに見透かされる。誠実な一人のファンとして加わることが、結果的に最短の広がり方になる。
投稿する曜日にも差がある
曜日の効果は、書き方ほど大きくないが実在する。日曜のNotesは平均0.236人、水曜は0.133人で、日曜が水曜を78%上回った。日曜の読者は受信箱を片付ける必要がなく、のんびりスクロールしてクリックを検討する余裕がある。水曜は会議の合間に急いでフィードを流しているので、反応はしても購読まで届きにくい。投稿のタイミングを一つ変えるだけなら、まず日曜を試す価値がある。
ただし、鵜呑みにしてはいけない一点がある
ここまでアメリカのノウハウを並べてきたが、正直に書いておくべきことがある。Substack運営術を発信する有名アカウントの助言は、割り引いて受け取ったほうがいい。Pubstack Successの書き手が自ら指摘しているのは、彼らの多くが「Substackの書き方」そのものをテーマにしているという事実だ。Notesを使う層と読者層が大きく重なっているので、はじめから到達しやすい。同じ戦略を別ジャンルで使っても同じようには伸びない。実際、彼女は二つの異なるテーマで二つのアカウントを運用し、片方は伸び、片方は伸びなかったと書いている。
だから今日紹介した数字も、原理として受け取るのが正しい。最初の一文で名乗る、畳みかける、折りたたませない、リスタックを狙う、断定する。この原理は普遍的だが、効き方はジャンルと読者で変わる。自分のNotesで一つずつ試し、どれが自分の読者に効くかを確かめる。それ以外に近道はない。
明日からなにをNotesに投稿するのか、いま打つべき手
やることは多くない。第一に、Notesの一行目で、遠慮せず自分の経歴と専門を名乗る。第二に、いいねの数を追うのをやめ、リスタックされた回数だけを記録する。第三に、購読へ運ぶ決め手の一行は、問いかけではなく断定で締める。この三つを2週間続けるだけで、フィードでのあなたの見え方は変わる。
Notesは、書いた量で勝つ場所ではない。誰が、何を、どう手渡すか。それで決まる。いいねの数は、いくら伸びても手元には残らない。あなたの発信まで渡ってきて、購読者として名前を残した人だけが残る。今日見てきた数字が最後に教えているのは、そこだ。




SubstackのNotesに限った話ではないと思うのですが・・・
結局「どんな人が書いてるか」って興味をもたせるのと、誰かの投稿にコメントを入れる時には、その投稿(コメント)主に対しての意見や感想ってだけではなく、それを見る(読む)他の人にもアッピ~ルになるように書くのが良いんじゃないかと(・∀・)
いつも有益な記事をありがとうございます。
30語というのはだいたいXと同じくらいの文字量かなと思うので、なるほどと思いました。