英語圏が9年かけて検証した型を、日本の書き手は初日から使える
有料化、推薦機能、Notes。30日を超えた先の3つの判断を、検証済みのデータで決める
前回のニュースレターで「最初の30日」を書いた。今日はその先、サブスタックを30日続けた人が次にぶつかる3つのテーマを書く。日本語のニュースレターで有料を取る話、推薦機能を日本人書き手同士でどう循環させるかの話、Notesを日本語コンテンツでどう運用するかの話。この3つだ。
最初に大事なことを書く。日本でサブスタックを始める人は、今、構造的に有利な位置にいる。
理由は単純だ。英語圏のサブスタックは2017年に始まり、9年かけて何が効いて何が効かないかを検証してきた。Lenny Rachitskyは2019年に始めて100万人に届いた。Carrieという書き手は2025年に11人から5800人を6ヶ月で達成した。彼らが5年から9年かけて発見した「効くやり方」を、私たちは今日、初日から知った状態でスタートできる。これは日本市場にこれから参入する人の最大のアドバンテージだ。
英語圏の書き手は実験を済ませてくれた。日本の書き手は、検証済みの型を実装する側でスタートできる。この差は大きい。
論点1 日本語ニュースレターで有料を取る
最初の問いは「いつ有料化するか」だ。
英語圏の答えは出ている。Lenny Rachitskyは2019年8月にサブスタックを始めて、9ヶ月後の2020年4月に有料化に踏み切った。有料化した最初の月で無料13,000人、有料486人、年間経常収益で約56,000ドル。1年後には有料3,300人、年間収益は推定36万ドルに達した。
ここから学べる構造はこうだ。有料化の成否は「有料化した瞬間の無料リストの規模」で決まる。Lennyは9ヶ月かけて無料リストを13,000人まで育てた上で有料化のスイッチを入れた。だから初月でいきなり486人の有料購読者が立ち上がった。もし彼が最初から有料化していたら、この数字は絶対に出ていない。
これが日本の書き手にとって朗報になる理由を書く。英語圏が証明したのは「無料期間を長く取った方が、有料化後の収益は大きくなる」という事実だ。最初の半年から1年は無料に集中していい。むしろ無料に集中するのが正解だと、英語圏のトップ層が実証してくれている。焦らなくていい。
日本の書き手が今から始めるなら、この9ヶ月から12ヶ月の育成期間を、英語圏の検証データを背景に持った状態で過ごせる。「いつ有料化すべきか」「無料期間に何をすべきか」が手探りだった英語圏の書き手と違い、日本の書き手は最初から「9ヶ月から12ヶ月、無料リストを育てる」という明確な指針を持ってスタートできる。これは大きい。
論点2 推薦機能を日本人書き手同士で循環させる
サブスタックの最大の発明は推薦機能(Recommendations)だ。新規購読時に「他にこういうニュースレターもありますよ」と書き手同士で読者を相互紹介する仕組みになっている。
この機能がどれだけ強力かを数字で示す。Lennyは2022年10月に「新規購読者の78%、有料転換の11%が他のサブスタックからの推薦経由で来ている」と公表している。広告費ゼロで、書き手同士が読者を融通し合うネットワークが回っている状態だ。
ここで多くの人が「英語圏は書き手が多いから回るんでしょ。日本はまだ書き手が少ないから機能しないのでは」と考える。実はその逆だ。
英語圏は書き手が多すぎて、推薦機能の中でも埋もれる。同じテーマで何百人もの書き手がひしめき合っているので、推薦のチェーンに入るために激しい競争が起きる。一方、日本語のサブスタックはこれから増えていく局面にある。今のうちに参入して、最初から相互推薦の関係を作っておけば、日本語サブスタックの成長カーブにそのまま乗ることができる。
具体的に何をやるか。自分のテーマと近い日本人サブスタッカーを見つけて、その人の記事に読者として質の高いコメントを残す。相手のサブスタックを推薦機能で先に紹介する。サブスタックは推薦された側に通知が飛び、「推薦し返しませんか」と促す設計になっているので、自然な流れで相互推薦が成立する。
これを5人から10人と築いておけば、日本語サブスタックの裾野が広がってきた2年後、3年後に、自分が「日本語サブスタックの推薦ネットワークの中心ノードの一人」になっている。これは今始める人だけが取れるポジションだ。後から参入する人は、すでにできあがったネットワークの外側から入ることになる。
英語圏でこの構図を最も恩恵を受けたのもLennyだった。彼が成長加速期に到達したのは2022年4月に推薦機能がローンチされてからで、彼のサブスタックを推薦している他のニュースレターは2023年時点で1,000を超えていた。日本語サブスタックでも同じ構造が起きる。先に動いた人が最も得をする。
論点3 Notesを日本語コンテンツで運用する
Notesはサブスタック内の短文投稿機能で、今、英語圏のサブスタッカーが最も力を入れている場所だ。
数字で示す。前回も紹介したCarrieという書き手は、Notesを起点に6ヶ月で11人から5,800人まで購読者を増やし、新規購読者の60%以上がNotes経由だったと公表している。別の書き手は「0から15,000人に到達し、その70%がNotes経由」と書いている。サブスタック共同創業者のHamish McKenzieは2025年に「サブスタックアプリが3ヶ月で3,200万の無料購読と約50万の有料購読を駆動し、今や書き手にとって最大の購読者・収益成長源になっている」と公式に発信した。Notesは推薦機能を超える成長エンジンになっている。
ここに日本の書き手にとっての朗報が2つある。
1つ目。Notesのアルゴリズムは、サブスタックの機械学習責任者Mike Cohenが明言している通り、滞在時間を最大化する設計ではない。読者の言語、購読履歴、フォロー履歴、興味カテゴリを見て、書き手と読者を個別にマッチングする設計になっている。これは日本語のNotesにも同じロジックで適用される。日本語でNotesを書けば、日本語の読者が個別マッチングで集まってくる。フォロワーがゼロでも、最初の投稿から日本語の興味ユーザーに届く可能性がある。これはX、Instagram、TikTokのどれとも違う設計だ。
2つ目。日本人にはNotesに必要な技術がすでに備わっている。XやTwitterで日本人が10年以上培ってきた「短く、鋭く、余韻を残す140字の文化」は、Notesのフォーマットとぴったり噛み合う。英語圏の書き手は今、長文ブログ文化から短文Notes文化への移行で四苦八苦している。日本人はその移行を既にXで完了している。
英語圏で効くNotesの型は明確になっている。1日2〜3本から始める。配分は「他の書き手の投稿への引用コメント、自分の専門領域の短い思考、自分の記事への誘導」を混ぜる。Carrieも別の上位書き手も同じ型を共有している。日本の書き手は、この検証済みの型を、Xで鍛えた短文力で実装するだけでいい。
最後に
3つのテーマをまとめると、サブスタックを30日超で運用するときの構造はこうなる。
有料化は焦らず、無料リストを育てる時期を持つ。これは英語圏のトップ層が9ヶ月かけて証明した正解の型だ。推薦機能は日本でこれから起きる成長ネットワークの中心に入る最大のチャンスで、今動いた人が一番得をする。Notesは英語圏で最強の成長エンジンになっており、日本人がXで培った短文力をそのまま活かせる場所だ。
英語圏は実験する側だった。日本は実装する側でスタートできる。この構造的優位を最大限に使いに行く30日を、ここから組んでいく。
今日の3つのテーマで「自分の運用方針が定まった」というものがあれば、ぜひコメント欄で教えてほしい。あなたの判断が、後から始める読者の参考になる。




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